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社会保険の扶養を知ればネットビジネス副業の幅が広がります

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以前の記事では、扶養の概念として3種類あることを説明しました。
①所得税の扶養
②住民税の扶養
③社会保険の扶養

前回の記事では所得税の扶養について話をしましたので、当記事では『社会保険の扶養』にテーマを絞って注意すべき点を説明します。

社会保険の扶養には『130万円の壁』がある

一般的に、奥様は夫に『扶養されている』方として、夫の社会保険に加入しています。夫の社会保険に入っている場合、奥様の保険料を追加で支払う必要がないため、実質的に無料で健康保険証を入手することができることになります。
しかし奥様名義で副業を始められる場合、やり方を間違えると夫の社会保険から外れなければならなくなります。
こうなると、奥様は自分で国民健康保険に加入し、ご自分で追加の保険料を支払う必要が生じてしまいます。国民健康保険料は高額ですので、最低でも月に4万円程度を追加で支払ことになります。

また夫の扶養から外れた場合、奥様はご自分の負担で国民年金負担分を納付する必要が生じます。負担額は月に約1万5千円です。国民健康保険料の4万円もありますので、奥様が扶養から外れた場合の影響がいかに大きいかを実感されるかと思います。

少しでも生活を楽にしたいからネットビジネスで副業を始めたのに、夫の社会保険から外れてしまい結局損をしてしまった。。。

こうした結果にならないためにも、社会保険の扶養の概念をよく理解しましょう。

社会保険の扶養をきちんと理解しよう

社会保険の扶養を理解するポイントは『130万円の壁』です。

社会保険の扶養とは、『現時点から将来に向けた1年間で得られる収入の見込み』が『130万円』を下回る場合にのみ適用できる特例制度です。

所得税では、1月1日~12月31日の期間で得られた所得で扶養か否かを判定する『過去の金額』を用いた概念だったのに対し、社会保険の扶養は『現時点から将来に向けた1年間で得られる収入の見込み』という『将来の見込み金額』を用いた概念であることが混乱するポイントです。

『将来の見込み金額』を判定するに際しては、例えばアルバイトの場合では、毎月の給与額が『108,333円』を超えた時点で、その日から夫の社会保険の扶養から外れることになります(108,333円×12か月≒1,300,000円)。

ですので、仮に夫の会社から奥様の直近3カ月間の給与明細書の記録を提出するように求められた場合で(良くある話ですよ!)、3ヶ月間すべてで108,333円を超えてしまっていた場合は、原則的に夫の社会保険の扶養から外れる必要があります。

とはいえ、アルバイトの働き方には繁忙期と閑散期がありますから、たまたま数カ月間のみ月給が108,333円を超えてしまったというケースもあるでしょう。その場合は、雇用契約書を提出し、年間を通してみれば130万円を超えない旨を主張してみましょう。

例えば、時給900円の条件で働いている場合、週3日・1日8時間の勤務であれば1か月の収入は108,000円に収まりますので、年間を通してみれば130万円を超えない等の理論で主張すれば、夫の社会保険の扶養のままで入れる可能性は非常に高いです。

では別のケースで、奥様が年収200万円の正社員を退職された場合は、いつの時点で夫の社会保険の扶養に入れるかわかりますでしょうか?

答えは『退職日の翌日から』です。
正社員を退職された時点で、既に将来の収入見込みがないので、夫の社会保険の扶養に入れるという訳です。

奥様名義で副業を始める場合は?

さて、ここまでは奥様がアルバイトや正社員で働かれる場合の扶養判定の話をしていましたが、皆様の興味は、あくまで奥様名義で副業を始める場合の話でしょう。
これについては、まず夫の健康保険が何であるかにより対応が変わってきます。

一般的な健康保険は協会けんぽですが、その他にも健康保険組合という独自の保険を営んでいる組合があります。そうした組合については、『そもそも奥様が副業を始めた時点で収入の大小関係なく扶養とは認めない』という厳しいスタンスの組合もあれば、『副業の収入が130万円を超える見込みが立った時点で扶養から外れるように指導』するスタンスの組合もあります。

まずは夫の健康保険に連絡し、方針が前者でないことを確認することから始めましょう。

確認が取れましたら、次に130万円の金額の算定方法の話です。

他の方のホームページを拝見していると、副業の売上が130万円を超えたら扶養から外れないといけない、と記載している方を見かけます。

これ間違いですよ。

多くの健康保険では、副業での扶養判定を『売上-経費<130万円』の式で判定しています。

ですので、副業の売上が130万円を超えていても仕入額を差し引くと130万円を下回る場合は、奥様は夫の社会保険の扶養のままでいられるのです。

が、、、これも必ず健康保険に連絡して、内容を確かめて下さい。困ったことに、一部の健康保険では『売上<130万円』で判定する極悪なスタンスの組合もあるのです。。こちらについては、必ず直接連絡して聞いてください。保険証を見ればどこの健康保険かわかりますから、ホームページで検索して直接電話して確認しましょう。

とはいえ、原則的には『売上-経費<130万円』で扶養判定しますので、皆様が奥様名義で副業を始められる場合は、必ず130万円未満に収まるように取引量を調整することをおすすめします。

まとめますと。
①夫の健康保険に連絡し、奥様が個人事業を始める場合の扶養の取扱いを聞くこと(130万円未満であれば扶養となることを確認)
②夫の健康保険に連絡し、130万円の金額の算定方法を聞くこと(売上-経費<130万円を確認)
③売上-経費=130万円未満となるように、副業の取引量を調整すること

上記の3点を守ってさえ頂ければ、奥様名義で副業を始められることはとても有意義なものとなります。是非、副業ライフを充実させていきましょう!

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